私と愛犬のちょっと不思議なお話

私は、7年ほど前まで

犬を飼っていた。

 

 

幼い頃から、犬が好きで、

飼いたくて仕方がなかった

私にとって、

念願かなって、飼った待望の犬だった。

 

 

飼う前に本を買い込み、

飼い主としての予習までして

お迎えした(笑)

 

 

豆柴で、名前は、あずさ

底抜けに明るい、陽気な犬で。

警戒心が強いとも言われる柴犬なのに

やたら、フレンドリー。

だれにでも尻尾を振って、お愛想をふり、

誰が飼い主なのやら・・・

と思うこともあったが、

そのおかげで、散歩中のお友達も多く、

犬同士、飼い主同士の輪も広がって、

気付けば、知り合いが、増えていた(笑)

 

 

それでいて、柴犬らしい忠実さもあり、

当時、塾の講師で帰りの遅い私を

眠らずに待っていて、

熱烈歓迎のお出迎えをしてくれた。

 

 

見た目も抜群に可愛かった。

(飼い主ばかです!ごめんなさい🙇)

 

「あーちゃんは、可愛いね~!」

(あーちゃんは、犬のニックネームです)

 

といいながら、常に撫でまわす?ようにして、

可愛がって育てたので、

かわいいと言えば、

自分のことだと思っているような

ワンちゃんだった。

 

 

それが証拠に、散歩中すれ違う高校生たちが、

こちらとは、全く違う話題で

「かわいいー!」

と盛り上がっていても、

わたしのこと?

と、振り向いてしまうあずさなのだった。

 

 

でもその愛嬌と、

元来の天真爛漫さもあり、

ご近所さんたちにも可愛がられた

私をはじめ、飼い主家族にも

たくさんの楽しさと思い出をくれた

 

 

最初に本を読み漁ったのが、良かったのかは、

わからないが、獣医さんにも恵まれて、

あずさは、16年と7ヶ月も生きてくれた。

 

 

あずさが逝ったのは、春爛漫の頃だった。

体調を崩して、動物病院に入院させたものの、

年齢が年齢だけに、

今度は、助けられないと

獣医さんから言われた。

 

だから、初めから覚悟は、決めていた。

それでも、一週間あずさは、

頑張って生きてくれた。

私は、毎日、あずさに会いに行った。

どんどん弱っていくのを見るのは、

つらかったけれど。

 

会いに行くと、

懸命に尻尾を振ろうとしてくれる姿が、

いじらしくて、愛しかった。

 

とうとうその時が来た。

獣医さんから電話で、

あずさが、たった今、逝ったと。

 

獣医さんの診察時間は、すでに終わっていた。

でも、医院を開けて、待っているので、

会いに来てください。と

獣医さんは、言ってくれた。

 

 

すぐに、母と2人で、会いに行った。

あずさは、診察台のうえに、

バスタオルのお布団でくるまれて

寝かされていた。

 

 

抱っこしてあげてくださいと言われて、

あずさを抱っこした。

抱っこしても、いつもなら動くあずさが、

全く動かない・・・。

でも、まだ、どこか、

あずさの死が、受け入れられない

 

 

「おうちに、連れてかえられますか?」

「あずさちゃんの(死亡)届けは、

病院で代行しましょうか?」

獣医さんの言葉で、

段々、あずさの死が、自分に迫ってくる

 

 

私は、結局、あずさを家に連れて帰らなかった。

連れて帰れなかったのだ。

 

 

獣医さんから帰る途中で、悲しくなった。

帰る途中の公園の

満開の桜が、目に入った途端に、

どっと涙が出てきた。

家に入った途端、号泣した。

 

 

それから3日間、泣き暮らした。

お散歩に連れて行った時間に。

あずさが、逝った時間に。

弱っていったあずさばかりを思い出しては、

泣いていた。

 

たぶん、ペットロスだったと思う。

そして、3日目のことだった。

お風呂に入っていた私は、

また、あずさを思い出して泣いていた。

 

 

その時、不意にだれかに言われた。

 

楽しかったことだけ、思い出せばいいの!

うれしかったことだけ、覚えてればいいの!

 

「 ?! 」

 

辺りを見回したが、

当然、私だけしかいなかった。

 

 

私は、その日から、噓のように立ち直った

あずさとの楽しかった思い出だけを胸に

前を向けるようになったのだった。

 

泣かなくなった私に、母が、言った。

「誰かが言ったって・・・

それ、あーちゃんしかいないでしょ。」

 

 

そう、犬は喋れないのだが、

わたしをペットロスから救ってくれたのは、

ほかの誰でもないあずさだったと信じている

最後まで、飼い主思いだった、

愛犬と私の、ちょっと不思議なお話・・・。