どんぐりと作文・・日常を文にするということ

帰宅途中の道端に

ふと、秋の名残のドングリを見つけました。

 

今日の風は、真冬を感じさせるくらい

冷たかったのですが、

ドングリを見て、

 

なんだかとてもほっこり

 

 

そこで、ふと思い出したのが、

塾の講師をしていた時の

小学生の男の子のことでした。

 

その頃、私は、毎週土曜日午前中、

小学生を塾近くの図書館に連れて行ったり、

作文教室を開講したりしていました。

 

その日も、

 

昨日から今日、この塾の教室に来るまでに、

あったこと、感じたことを、

文章にしてみよう!

 

という題で、

文章を書かせていました。

 

 

もちろん、小学生相手ですから、

これだけでは、まるっきり書けませんが、

昨日から自分が、何をやっていたかを

書き出す作業から始めると

 

へえー、自分は、こんなことをしてたのか。

 

と、ほんの少し前の過去の自分に

いろいろな発見があるらしく、

途端に表情が変わってきます。

その過去の自分の一場面を、

取り出して、

作文にしてもらうわけです。

 

 

みんなが、文章を書き始める中、

どうしても、書き始められない

男の子がいました。

 

 

私とペアを組んで見守っていた

もう一人の講師も、

筆が進まないのが気になっているらしく、

何度も見回っています。

もちろん、私も、気になっていました。

 

 

しばらくすると、

その男の子が、

意を決したように

わたしのもとへやってきました。

 

「先生、かけないよ。

だって、ぼく、昨日からご飯食べて、

寝ただけだもん。

ここに来たのだって、お母さんに車で

送ってもらっただけだし。」

 

 

この言葉を聞いて、わたしは、

 

「どこかで聞いたことあるような・・・」

 

思わずつぶやきそうになっていました。

 

 

実は、父の転勤で、

東北地方に住んでいたころ、

通っていた小学校の宿題に

日記が、あったのです。

 

日記ですから、当然書くのも毎日で。

書くネタに、困っていた私が、

母の後ろを追いかけながら、

同じことを言っていたのです。

 

 

「わたし、ご飯食べて寝ただけだから、

何も書くことないよー。

どこにもお出かけしてないし・・・。」

 

 

どうして子供って、同じことを言うのだろう。

わ・た・し・と。(笑)

 

 

ちょっとこみあげてきそうな、

笑いをこらえて

その男の子をみると

手のひらの中に、

何か持っていそうだったので、何気なく

なに持ってるの?」

ときいてみました。

 

すると、手のひらの中から現れたのは、

どんぐりでした。

 

「ひろったの?」

 

「うん。」

 

「どこで?」

 

「昨日遊んでた公園。」

 

どうしてひろったの?」

 

「どうしてって・・・。」

 

ここでちょっと困った顔をしましたが、

やがて、

おもしろいかたちだし、遊べそうだったから!

と元気に答えました。

 

 

なので、私も、元気よく、

「今のそれを書けばいいんじゃない?」

と答えました。

 

すると、男の子は驚いたように、

目を見開いていましたが、

やがて、机に戻って作文を書き始めました。

きっと、文章を書くということの

何かをつかんだのだと思います。

 

 

独立して、教えるようになった今でも、

作文や読書感想文について、

生徒さんや、そのご両親から

相談を受けることが、よくあります。

 

文章を書くことは、何も特別なことではなく、

イベントや、何か特別なことがないと

書けないわけじゃないということを

なるべく伝えられたらと思いながら、

接するようにしています。

 

 

 

ブログの私のこの場所も

日々、埋もれていってしまうだろう

日常の何かキラキラしたものを、

少しでも書き留められたら・・・。

そう思っています。